虫歯の原因はS.ミュータンスやS.ソブリヌス等、数種類の細菌による感染症なのです。これら虫歯菌が砂糖中のブドウ糖を分解し、歯の表面にネバネバした多糖体(デキストラン)という物質をつくり、さらに多糖体がバイオフィルムという形になり 虫歯発症となるのです。
虫歯をつくらないためには、甘いものを控えることと、日々の手入れをしっかり行うことが大切であることはわかっているのですが、なかなか実行できないのが現状ですね。
1.まず、口の中をふわふわ浮いているミュータンス菌やソブリヌス菌と砂糖(ブドウ糖と果糖からなる2糖類)が出会うと、むし歯菌がグルコシルトランスフェラーゼ(GTF)と言う酵素を分泌し、砂糖などからネバネバと接着性が強く唾液や水にはなかなか溶けない多糖体・グルカン(デキストラン)を合成します。
2.この多糖体・グルカンがエナメル質表面にベチャッ!と接着し、これにむし歯菌がひっつけられ増殖し「歯垢」をつくりエナメル質を溶かしやすい環境をつくります。お口の手入れが悪いとグルカンは益々厚みを増していき、ぶ厚いヌルヌルした膜をくっていきます。これがバイオフィルムです。
3.むし歯菌は食べ物から糖分を吸収しバイオフィルムの中でぬくぬくと生き続け、糖分から乳酸や酢酸、蟻酸などをつくり放出します。さらにバイオフィムは厚みを増していき、むし歯菌はそのヌルヌルした膜の内側で増え続けます。作り出された乳酸等は、バイオフィルムのなかでエナメル質の表面を脱灰します。すなわち「エナメル質むし歯」の始まりです。
さらにむし歯菌はいったんバイオフィルムを形成してしまうと、食べ物から砂糖など甘いものを食べなくてもデキストラナーゼという酵素を分泌しバイオフィルムを構成する多糖体・グルカンをも分解し乳酸をつくり出してエナメル質を脱灰し続けます。
4.エナメル質脱灰がしばらく続くと歯の表面が 白濁してきます。これが ”エナメル質むし歯 ” と呼ばれる第1段階 のむし歯の完成です。バイオフィルムの表面(歯垢)は歯ブラシで落とすことができますが、内面は歯ブラシなどで簡単に除去することはできません。ですから歯科医院での除去が重要です。
5.むし歯がいったんエナメル質を破壊すると象牙質 に達します。象牙質は有機質に富む比較的軟らかい組織なのでエナメル質によりもずっと大きく破壊され、むし歯の大きな穴ができてしまいます。これが”象牙質むし歯 ”と呼ばれる第2段階のむし歯です。
6.更に象牙質深部に達すると象牙細管という細い管を通して細菌が感染し、歯髄組織に炎症が起こり我慢できないほどの激痛が走ります。これを「歯髄炎」と呼びます。ここまで来ると麻酔して神経を除去しなければならないようになります。バイオフィルムを除去しないと大変なことになりますよ!
歯の表面にバイオフィルムがたくさん付着しているとエナメル質がむし歯(初期むし歯)になってしまいます。むし歯の症状は、まずエナメル質表面の白濁から始まります。そして冷たい物にしみるようになります。さらに深くなり象牙質に達すると、食べ物の圧迫によって激痛を発するようになります。さらに進行すると歯髄炎を起こします。歯髄神経が細菌感染でやられてしまい、熱いものや冷たいものなどの刺激で激痛が走るようになります。また、根っ子の中が化膿し、根の尖端部の歯槽骨にウミがたまり抜歯の憂き目にあうかもしれませんよ。
多くのむし歯は、口の中に歯がはえはじめて2年くらいに急に発症します!また、歯表面にバイオフィルムを形成すると虫歯が大きくなっていきます。
乳歯のむし歯は1年半!それ以後なかなかできにくいものなのです。口の中に一本歯がはえてきたとします。その歯はまだ非常に柔らかい状態(未成熟と呼ぶ)で、どんなものとでも反応するようなまだ不安定な状態にあるのです。しかし、次第に時間が経つにつれて、丈夫に硬くなっていくのです。歯がはえはじめて2年も経つと立派なガラス状になります(これを成熟と呼びます)。そうなればむし歯にならないような状態になっているのです。すなわち、ガラスのように硬くなるまでの1年半から2年の間に、むし歯という悪い化学反応で起こるのです。逆に良い化学反応も起こり得るわけで、この時期にフッ素を処置してあげると歯質が強化され、むし歯にかかりにくい丈夫な歯が完成します。
歯が萌出してから2年間の間は、歯ブラシとフロスとフッ素よる予防処置をする大切な時期なのです。一番奥の歯(7番目、第2大臼歯)が萌出するのは12歳ころですから、歯ブラシやフッ素洗口法による予防は12歳まで、3~4ヶ月毎に行うことが必要です。
結論! むし歯は歯の萌出直後に起こりやすい!
むし歯はバイオフィルムの中でつくられる!
フッ素による予防も萌出直後に行うと効果的!
それも12歳まで。検診は3-4ヶ月毎におこなうこと!