キシリトールの話

  

 

・キシリトールとフィンランド
  
   最近、「虫歯予防にキシリトール!」という言葉をよく耳にしますね。
  フィンランドの国民が盛んにキシリトール配合のガムを咬むために虫歯が激減したとの
  TVコマーシャルが、我が国では毎日放送されています。フィンランドが世界一虫歯の
  少ない国になったのには、国民や医療界、それに行政サイドの口腔衛生意識の高さと、
  1975年以後の国や市町村でのフッ化物を用いた虫歯予防行政の徹底実施のたまものな
  のです。丁度、時期を同じくして、同国でキシリトールが見直され(1975年に初の
  キシリトールガムが発売された。)たことが重なり、フィンランドでは脅威的に虫歯が
  減少し、世界一虫歯の少ない国になったのです。(参考に1975年頃は日本国民とフィン
  ランド国民の虫歯の数はフィンランド6.9本、日本5.6本とフィンランドの方が多かった
  のですが、1978年には両国でほぼ同じ虫歯数となり、1991年時点のフィンランドは
  1.2本と激減、1993年時点の日本は3.7本です。いかに減少したかがおわかりでしょう。)
  日本も、フッ化物を利用した予防行政と、そこにキシリトールの併用を徹底して実施し
  たら第二のフィンランドのような素晴らしい国になるでしょうね。

 
 
・キシリトールの作用について
  
   キシリトールを従来の虫歯予防方法(フッ化物の水道水への添加、フッ素洗口、塗布、歯磨剤
  への配合、錠剤、グミ等)と併用することにより一段と齲蝕予防効果が高まる食品、または食
  品添加物と考えております。厚生省は1997年4月に、キシリトールを安全な食品添加物として
  認可しました。
  このキシリトールは虫歯菌に対してユニークな作用を行います。虫歯菌がキシリトールを分解
  する過程で細胞内に毒素をつくったり、せっかく分解したにもかかわらず、また元のキシリト
  ールを生成したりと、虫歯菌のエネルギーを浪費させ、菌の細胞内に中毒を起こし、菌を弱ら
  せ、殺し、増殖を妨害すのです。その結果、虫歯ができにくいわけです。
   キシリトールをたくさん食べると下痢をするとか言われていますが、糖尿病患者で1日70g
  までは安全であり、健常成人では1日90gまでは良いと言われています。
  1983年のWHOの会議ではキシリトールの量の制限は特定しない(制限が必要ない食品又は食
  品添加物である。)と声明しております。
  再度、我が国では厚生省が1997年4月に、安全な食品添加物として認可していることを付け加
  えておきます。

 

 

・シリトールの予防効果
 
 結論から申しますと、従来の虫歯予防法方のフッ化物等
とキシリトール摂取を併用することの方が、単独にフッ化
物だけで予防するよりも、高い虫歯予防効果が期待できる
のです。キシリトールは長い期間使用しないと予防効果が
発揮されません。例えば、ガムであれば1日9g摂取した
とすれば、2週間以上経過してから次第に予防効果が現れ
てきます。また、同じキシリトール配合ガムでも粒状のガ
ム(タブレット)の方が、虫歯予防効果が高いという結果
報告がでております。歯科医院で販売しているガムがタブ
レット状なのがおわかりでしょう。毎日ガムを咬んだら、
ちょと経済的にも結構負担がかかるみたいですね。
 その他、歯磨剤や、洗口剤にフッ素と一緒に配合すると
これまた効果的です。(フッ化物とキシリトールとの相乗
効果)特に、フィンランドでは、フッ素のトローチの中に
キシリトールを配合しものを口腔内にほおばり、虫歯予防
をする方法がよくとられていますが、この方法だと長時間
フッ素とキシリトールが歯に作用するため、虫歯予防効果
が非常によいのです。我が国でも実施されることを強く望
みたいものですね。

 一方、1975年に早々とキシリトール配合ガムが発売されたアメリカは、いまだにキシリトールの虫歯予防効果を認めてい
ない事実には驚きと、興味がありますね。アメリカに行っても、殆どキシリトールガムやお菓子は目にしません。唯一写真の
ガムだけ販売されていました。(しかし、フィンランド製のようです。)水道水にフッ化物を添加しているために、殆ど国民
には虫歯はありません。ですから、キシリトールについてはそんなに関心事ではないのでしょうね。
 最近ではリカルデント配合のガムが発売されています。これは、オーストラリアのメルボルン大学で研究開発されたもので、
初期の虫歯を修復する材料として一躍脚光を浴びています。リカルデントは牛乳からつくられており、初期虫歯を修復するの
に必要なリンとカルシウムから成っています。キシリトールと同じように、今後益々利用されるでしょう。皆さん、キシリト
ールについて誤解や過信をせず、上手につき合いましょう!

 

 

 

・Xylitol とは
 
   英語ではXylitol 、またはPentitol(ペンチトール)と書きます。 
  フィンランドでは、Ksylitolia(Finnish)と書きます。
  キシリトールは炭素を5つもつ糖アルコール類です。
  カテゴリーは食物又は食品添加物である。広く食品などに自然界に存在します。
  口腔内でデキストラン(虫歯菌がつくる人類の一番の敵)を合成しない。
  食品などから酸を産生しないという性質があるため虫歯予防に利用される。
  又、インシュリン依存しないために糖尿病の患者さんの代替糖としては有益なものである。
  最後に参考まで、北欧での近年の12歳の子供達の虫歯の数(DMFT)は、
デンマークで1.3(1994)フィンランドでは1.2(1991)
ノルウエーで2.1(1993)スウエーデンでは1.6(1994)
すべて、WHOが2000年の目標としている3本以下をはるかにクリアしています。
羨ましい限り!